検索すると『写真をアニメ調の背景に加工する手法』は結構出回っています。
が、それはPhotoShopやクリスタなどの有料ソフトを使わなければならない場合が多いのが現状。
ここでは、基本無料で使用できる万能ペイントソフト『メディバンペイント』だけを使用して、写真をアニメ調のイラストになじむ背景へ加工していく方法をご紹介します。
※今回はPC版メディバンペイントを使用して説明しています。
iPhone版、iPad版では一部フィルタ機能が有料となっている場合があります。
事前準備
作業に入る前に、背景にする写真を選定していきます。
今回、この写真を背景に使用することを決めました。
これは以前筆者が金沢旅行に行ってきた時に自分で撮影したものです。
使用する写真は自分で撮ったものを使用するのが一番望ましいですが、今はイラストの一部として使用を許可している素材サイトも数多くありますので、どうしても目的の写真が手元にない場合はそれらを使用するのも良いでしょう。
ただし、アダルトな表現を含む場合は使用できない素材サイトが多いので、利用規約はよく目を通してください。
以下の記事でアダルトコンテンツを含む場合でも使用できる写真素材サイトさんの紹介をしています。
※同人誌の表紙向けなので、一部写真じゃない素材サイトさんも含まれています
また、今回空の画像も置き換える予定なので、以下の写真も用意しました。
これも筆者があらかじめ撮っておいた写真です。
空と雲のコントラストがはっきりした写真の方がアニメっぽく映えます。
手順
彩度を高くする
メインで使用する写真をメディバンで開き、『フィルタ』→『色相』と『フィルタ』→『トーンカーブ』を使って彩度を高くします。
今回色彩は彩度を最大まで引き上げ、トーンカーブは気持ちS字にする感じで調整しました。
写真によってベストな数値は異なるので、目に痛くない程度に彩度を上げてください。
フィルタ適用後はこうなりました。
空を置き換える
写真を撮った日があいにくの天気だったので、無理矢理晴れの日にします笑
元の写真も空が真っ白だったのでわかりにくいですが、消しゴムツールで空を地道に消していきました。
遠くに見えていたビルも写真の雰囲気にそぐわなかったので一緒に消しました。
風景写真レイヤーの下に空の写真レイヤーを入れ、色相やトーンカーブで色合いを調節します。
なお、この段階ではまだ風景レイヤーと空レイヤーは結合しないでください。
色合いを調節する
建物と空の色合いがちぐはぐなので、色合いを調節していきます。
色合いを調節するためのレイヤーを2枚作成します。
1枚は一面青色のレイヤーを作りました。
『レイヤー』ウィンドウ内の『ブレンド』を『覆い焼き+不透明度20%』に設定しました。
色合いや濃度は写真によってまちまちなので、お好みで調整してください。
もう一枚は白〜青のグラデーションを作りました。こちらの設定は『オーバーレイ+不透明度50%』に設定しました。
2枚のレイヤーを風景レイヤーにクリッピングするとこんな感じになりました。
情報量を減らし、写真を引き締める
風景レイヤーをコピーし、『フィルタ』→『ガウスぼかし』で値を3前後にしてぼかしをかけます。
わかりにくいですが、ほんの少しぼんやりとしています。
ぼかしをかける前の風景レイヤーをコピーし、『フィルタ』→『色相』で、彩度を−100に設定すると、レイヤーがモノクロになります。
モノクロになったレイヤーを更にコピーし、ブレンド『除算』を選ぶと、画面が真っ白か真っ白に近い状態になります。
この状態で『フィルタ』→『ガウスぼかし』で値を3〜8くらいの小さい数値でかけると、枠線が浮かび上がってきます。
今回は値5でかけてみました。
線画レイヤーを結合し、その上に一枚レイヤーを新規作成して濃い青塗りつぶしのレイヤーをブレンド『スクリーン』にして重ねます。すると線画にだけ塗りつぶした色が乗ります。
線画レイヤーと青レイヤーを結合し、ブレンド『乗算』にします。
ぼかした写真に線画が入って引き締まりました。
現在、レイヤーは上から「線画レイヤー」→「風景レイヤー(ぼかし)」「風景レイヤー」「空レイヤー」となっています。
空レイヤー以外は結合します。
空気感を出す
最後に部分的に色を乗せていき、空気感を出します。
新規レイヤーを作り、エアブラシで遠景に青を乗せます。青を乗せる事でより遠くにある様に見せることができます。
風景レイヤーにクリッピングし、ブレンド『スクリーン+不透明度75%』に設定しました。
次は影となる部分に薄い紫を乗せました。
これはブレンド『乗算+不透明度50%』に設定しました。
全体の空気感がちょっと足りないかなと思ったので、青と水色のエアブラシで空気感を足しました。
これはブレンド『スクリーン+不透明度40%』に設定しました。
最後に石畳や壁の色が暗いなと思ったので、色合い調整で朱色を乗せました。
これはブレンド『スクリーン+不透明度50%』にしました。
すべて適用させるとこうなります。
ブレンドや不透明度の設定は写真によって異なりますので、あくまで参考程度にしてください。
完成!
最初の状態と比べると、アニメ絵も溶け込む背景になったかと思います。
なお、人物のイラストはイラストACさんでお借りしました。
アニメ調にするコツ
手順の中にも何度か説明しましたが、写真によって適切なブレンド設定や不透明度は異なるので難しく感じることもあるかもしれません。
そんな時は、以下の点を意識すれば比較的うまくいきます。
手順で使用した加工前と加工後の写真を見比べてみると、現実は彩度の高いものがそう多くありません。
彩度を高めると、非現実感を演出することができます。
手順の中でほんの少しぼかしを入れることによってディテールをつぶして写真っぽさを消しましたが、余裕のある時はブラシツールを使って模様などを加筆修正するのも手です。
今回使った写真は近景〜遠景の差がはっきりした写真でしたが、他にも近景メインの写真、遠景メインの写真でも試してみました。
どちらも左が加工前・右が加工後ですが、遠景メインの写真はあまりうまくいきませんでした。
彩度を高めることが難しく、ディテールもつぶしきれなかったためです。
このように、写真によって向き・不向きもありますので注意してください。
まとめ
手順は少々複雑だったかもしれませんが、一から背景を描く手間を考えるとかなり時短になるテクニックです。
皆さんの創作活動の手助けになれれば幸いです!
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